~丁寧さとスピードのバランスを大切に~
こんにちは。掛川市の家代デンタルクリニック、院長の村埜です。
今日は、時折耳にする患者さんの思いについてお話ししたいと思います。
「あそこの歯医者は治療まで時間がかかる」
「検査ばかりでなかなか治療が始まらない」
「歯周病やインプラント治療が長く続いているけど、これでいいの?」
こうした声は、多くの歯科医院で耳にするものです。
確かに「早く治療してほしい」というお気持ちはよくわかります。
しかし、“時間がかかる=悪い歯医者”とは限りません。
むしろ、丁寧で将来を見据えた治療を行っている可能性が高いのです。
■最初に時間をかける理由:診断がすべてのスタートライン
歯科治療の成否を大きく左右するのは、「どれだけ正確に診断できるか」という点です。
家代デンタルクリニックでも、初診時に問診・レントゲン撮影・口腔内写真・歯周病検査など、少し時間をかけて詳しく調べます。
「すぐに削って詰める」だけでは、一時的に症状が落ち着いても、根本的な解決にはなりません。
例えば、虫歯が繰り返しできるのは、噛み合わせや歯磨きのクセ、唾液の性質、歯並びなどが関係していることもあります。
また、歯周病や噛み合わせの異常が進行している場合、一本の歯だけでなく「お口全体」を見ていく必要があります。
つまり、木(1本の歯)を見る前に、森(お口全体)をしっかり見ていくことが大切です。
そのための資料採り・診査診断・説明の時間は、治療の土台を作る大切な工程です。
■歯周病治療やインプラントは「待つこと」も治療の一部
歯周病は、長い年月をかけて少しずつ進行する慢性疾患です。
そのため、短期間で一気に治すという発想自体が難しい病気です。
歯科医院でのクリーニングや治療だけでなく、患者さん自身のセルフケア(歯磨きや生活習慣の見直し)が何よりも重要です。
一度の治療で劇的に治るわけではなく、
「治療 → 生活習慣の改善 → 生体反応(治り)を確認 → 再評価 → 次のステップ」
というように、段階を踏んで進めていきます。
この過程を丁寧に行うことで、
再発の少ない、長期的に安定した口腔環境をつくることができます。
また、インプラント治療でも「待つ時間」がとても重要です。
インプラントは人工の歯根を骨に埋める治療ですが、骨としっかり結合(オッセオインテグレーション)するには数か月の治癒期間が必要です。
この期間を省略して急いで進めると、インプラントの安定性や長期予後に悪影響を及ぼすこともあります。
ですので、「時間がかかる=慎重に生体反応を見ている」ということでもあるのです。
■とはいえ、短期間での治療が適している場合も
もちろん、すべてのケースでゆっくり進めるのが良いわけではありません。
例えば、神経の治療(根管治療)のように感染が関係するケースでは、一度の治療にしっかり時間をかけて、少ない回数で終わらせるほうが成功率が高いとされています。
また、お仕事やご家庭の都合で通院回数を減らしたい方には、
「1回の治療時間を長めに設定して集中的に行う」といった対応も可能な場合があると思います。そのようなご希望がある場合、通っている歯医者さんに相談すると良いでしょう。
■治療が長い=ダメではない。むしろ“丁寧さ”の証。
歯科治療は、「どれだけ早く終わるか」よりも「どれだけ長く健康を保てるか」が本当のゴールです。
短期間で終わったとしても、数年後に再治療が必要になるようでは、結局患者さんの負担は大きくなってしまいます。
一方で、診査診断・説明・セルフケア・再評価といったプロセスを丁寧に積み重ねることで、
再発の少ない・長持ちする治療につながります。
🌱まとめ
- 「時間がかかる歯医者=悪い」ではありません。
- 検査・説明に時間をかけるのは、根本から治すための大切なステップ。
- 歯周病やインプラントは「待つこと」も治療の一部。
- 短期間で終わらせるべき治療もあり、希望に応じた対応も可能。
- 丁寧に時間をかけることが、結果的に「長持ちする治療」につながります。
家代デンタルクリニックでも、患者さんの“今”だけでなく、“10年後の健康”を見据えた診療を大切にしています。
「治療に時間はかかったとしても、しっかり診てくれている」――そう感じていただけるよう、これからも一つひとつの治療を丁寧に行ってまいります。
2025年10月21日 3:39 PM | カテゴリー:臨床の話