こんにちは、掛川市家代デンタルクリニックの村埜です。今日は「抜歯の基準」について解説したいと思います。
当院ではよく「他の歯医者さんで抜歯と診断されたけど、本当に残せないのですか?」「抜歯しか方法がないと言われたけど、歯を残す治療はできませんか?」とご相談をいただきます。実際に診察すると、やはり抜歯せざるを得ないケースもありますが、歯冠長延長術や矯正的挺出、歯周組織再生療法などを組み合わせることで「残せる歯」に変わるケースも多くあります。
では、実際にどのような基準で「抜歯」か「残す」かを判断しているのでしょうか?
抜歯になる主な原因
歯が抜歯と診断される原因にはいくつかありますが、特に多いのは次の3つです。
⑴歯周病
⑵虫歯
⑶歯根破折(歯の根の割れ)
ここでは、それぞれの「抜歯基準」について詳しくご説明します。
1. 歯周病と抜歯の基準
歯周病は「歯ぐきの病気」というイメージを持つ方が多いですが、実際に問題となるのは 歯を支える骨が溶けること です。進行すると歯がグラグラ動いたり、噛み合わせが崩れたり、最終的には歯が自然に抜けてしまうこともあります。
歯周病で抜歯を検討する基準は、例えば以下のような場合です。
- 根の先まで骨が溶けている
- 歯の揺れが非常に強い(動揺度3度)
- 咀嚼など機能面に問題があり改善の見込みがない
ただし、これらに該当しなければ歯を残せる可能性は十分にあります。重度の歯周病でも、歯磨きの改善や歯石除去、噛み合わせの調整、再生療法などを組み合わせることで、長期間残せるケースがあるのです。
実際、Cortelliniらの研究では「予後不良」と診断された歯に対して歯周組織再生療法を行った結果、10年後でも歯を維持でき、インプラントと生活の質(QOL)に差がなかったという報告もあります。当院でも歯周組織再生療法に取り組み、できるだけ歯を残す治療を心がけています。当院の歯周病治療については以下のページも参考にしてみてください。
https://www.ieshiro-dental.com/menu1.html
2. 虫歯と抜歯の基準
虫歯は細菌の酸によって歯が溶ける病気です。進行すると歯が大きく欠け、“健康な歯質”が少なくなります。
虫歯で抜歯を考える基準の一つは 健康な歯質や歯根がどれだけ残っているか です。
一般的には、残りの歯根が8~10mm以下になってしまった場合には、被せ物を作るための支えが不足し、抜歯の適応となることが多いとされています。
しかし、残っている歯が少なくても 必ずしも抜歯とは限りません。
- 歯冠長延長術(歯ぐきを下げて歯を露出させる)
- 矯正的挺出(歯を少し引っ張り出して歯質を増やす)
といった方法を組み合わせれば、残根状態の歯でも被せ物を入れられるケースがあります。当院ではこうした保存治療にも対応しており、「抜歯と言われた歯を残す可能性」を常に探っています。当院の虫歯治療については以下のページも参考にしてください。
https://www.ieshiro-dental.com/menu2.html
3. 歯根破折と抜歯の基準
歯根破折とは、歯の根にヒビや割れが入る状態です。原因は強い噛み合わせの力や歯ぎしり、大きな虫歯治療で歯が脆くなったことなどが挙げられます。
症状としては「噛むと痛い」「歯ぐきから膿が出る」「部分的に腫れる」などがあります。
歯根が縦方向に大きく割れてしまった場合は、細菌が侵入し続けるため基本的に抜歯の適応となります。しかし、割れ方が小さければ、接着性材料で補強したり外科的に処置することで保存できる場合もあります。
まとめ:本当に抜歯しかないのか?
「抜歯しかありません」と言われても、歯を残す治療の選択肢がまだ残されているケースは少なくありません。
- 歯周病 → 再生療法で残せる可能性
- 虫歯 → 歯冠長延長術・矯正的挺出で保存できる可能性
- 歯根破折 → 割れの程度によっては補強・外科的処置が可能
当院では、できる限り歯を残すことを第一に考え、インプラントや入れ歯に頼る前に「本当に残せないか」を診断します。
もし「抜歯と言われたけれど残したい」「歯を残す方法を知りたい」とお考えの方は、一度ご相談いただければと思います。掛川市・家代デンタルクリニック
2025年9月23日 8:28 PM | カテゴリー:臨床の話